
蛙股の中には法螺貝が。真言宗の寺であることからモチーフとして使用したのかもしれない。
|

初代伊八の竜。この奥には、初代伊八作といわれる酒仙の図も見られる。
|

金乗院大日如来堂欄間 「酒仙の図」 安永8年(1779)製作と推定
この欄間には銘が確認できませんが、向拝の竜と同じ時期、伊八28歳の時の製作と推定できます。七人の若い仙人たちが、大きな甕の中にある酒を酌み交わし、陽気に歌い踊るめでたい図(吉祥図)です。その図柄にふさわしく、鶴と亀も添えられています。中央と右側の仙人は酒を汲むための柄杓を手にし、杯を持つ仙人に酒をふるまっています。左側には、踊るように片脚を上げて調子よく笛を吹く仙人がいます。仙人それぞれの動きと風になびくような衣の柔らかさなどが、奥ゆき・立体感を伴って彫り出されています。実際はあまり厚みのない材が用いられていますが、平板な印象は全くありません。横長の構図に七人の仙人がリズム感をもって巧みに配されています。20代後半の伊八の構成力の高さが遺憾なく発揮されています。
|

金乗院大日如来堂向拝 「竜」 安永8年6月(1779)製作
裏面に「武志伊八郎信由」の刻銘があり、市内では「信由」と名乗った作としては最も早い時期の作例になります。長年の風雨の影響のためか、現在では表面がかなり風化しているため、製作当初の状態とはかなり異なっているものと推測できます。左前足で宝珠を握りしめていますが、右前脚の指の先は欠損しています。寺社の建築の正面の向拝(ごはい)を飾る竜としては、伊八の作の中でも最も早い時期に属する作例です。伊八の竜の作風は、これから年を経るごとに大きく変化していきます。
|
|

- ●文化財指定 等
- 「向拝の竜」・欄間「酒仙の図」(市有形文化財)
- ●伊八作品
- 酒仙、二百年の宴(初代・伊八28才作品)
- 大正時代、彫刻家の高村光雲が大日堂を訪れ、彫刻の秀雅さは、関東では稀であると評した。大日堂は、平安時代初期に、弘法大師ゆかりの大日如来像を安置するために建てられたといわれる。現在の大日堂は、昭和7年(1932)弘法大師一千百年遠忌を記念して再建されたもの。大日堂正面のタテ1.02m、ヨコ3.59mの欄間に酒仙の図が彫られている。酒仙は酒の好きな人、また酒仙童子は酒づくりの神様ともいわれている。7人の酒仙は、この大日堂で二百年間も、舞えや歌えの宴を開いている。左側で酒柄杓を頭上にかかげて踊る酒仙の白い足裏が目に入る。
[最寄駅] 安房鴨川駅
JR外房線安房鴨川駅より路線バス10分「大日」バス停下車
[駐車場]
普通
10台
|